2017-02-28(Tue)
やっちゃいましたな
私はNHKの「ガッテン!」という番組はたまに見かけますが、あまり好きじゃないので真面目に見たりはしてません。
何となく、特に健康に関する話題の時にうさん臭さを感じるからです。
大体、テレビで言ってることって極端だったり、端的じゃないと思えたりするんで…。
限られた時間で素人さんに分かるように説明するって結構難しいと思うんですよ。
内容はこの記事なんですが・・・
早速ありましたよ。患者さんが「糖尿病に効く睡眠薬があるとNHKでやっていました。私にも出してもらえませんか?」と薬の名前の書いたメモを持参されてきたんです。
話題の睡眠薬はもちろん医師の処方がないと手に入りませんし、糖尿病という病名で処方したら保険は通りません。
だからと言って本来の目的とは違う不眠症として処方するのもおかしいです。
第一、睡眠薬には結構副作用が出ることもあります。
テレビがこんなことを言ってもし、副作用出たらどうすんの、と思います。
本来の薬効とは違う効果が後から分かるっていうのはたまにあります。
アロチノロールっていう薬は元々β遮断剤といって、血圧を下げたり不整脈の脈拍数を下げたりという目的に使いますが、本態性振戦という病気にも効果があります。どこが悪い、というはっきりした原因はつかめないけど手が震える症状の人、です。
なので保険でも本態性振戦で通るようになりました。(かと言って他のβ遮断剤では効果がないようで、保険が効くのは1種類のみです)
有名なところではアスピリンは元々消炎鎮痛作用のある薬ですが、今は抗凝固剤剤としても心臓病の人や脳梗塞を起こした人などが血栓予防に飲んでいますね。
しかし、本当に報道されてる睡眠薬が血糖値を下げるのかどうか、エビデンスは確立されてないです。
規則正しく睡眠をしっかりとれば、食事時間も規則的になるし、運動なんかもしやすくなりますから、間接的に糖尿病にもいい影響はあるかと思います。
夜眠れないで起きていると無駄にお腹が空くし、夜中に何か食べたら絶対糖尿には悪いしね~。
でも、睡眠薬を飲んだら直接血糖値が下がる?そんな話初めて聞くけど?私が勉強不足なだけ?
こういうことをテレビや雑誌でやるとみなさん、特に高齢者などは本当にまともに信じてしまったりするんですよね。
無責任にエビデンスのない情報を発信するのはやめてもらいたいです。
患者さんに説明してあげるにしても時間もかかるし、空いてる時ならいいんですけど、混雑してる時は他の人を待たせてしまうし、現場は混乱してしまいます。
前に週刊現代だったかで飲んだらいけない薬特集、みたいなのもありましたが、あれも何人の患者さんからそのことを言われたことか。
でもそれを読んで急に飲むのやめたら危険な薬もあるし(降圧剤や糖尿病薬など)、第一、「こんな危険な薬を出すなんて!」と主治医に対して不信感を持つ患者さんも出たりして、大変なことに…。
薬は飲まないで済むに越したことないです。どの薬にも副作用が出るケースがありますから。
全員ではないけど、出る人には出る。
ですから、薬を飲みさえしていればいい、ということではなく、出来るだけ少ない薬で済むよう、自己管理が可能な病気は出来るだけ自分で普段から気をつけて生活することも大事ということなんですよね。
患者さんにしても何かといえば「薬出して下さい」っていうし、薬を出さない医師に対して「あそこに行っても薬も出してくれない!」と文句を言う…それもおかしいと思いませんか?
今は昔みたいに薬を出せば出すほど医者が儲かる時代ではないですから、必要ない薬は極力出したくない。
でも、そんなことばかりしていると「薬をくれない医者」とレッテルを貼られて患者さんが来ない→商売が成り立たない ってことにもなりかねない。
医師にも生活がありますからね。
病院や医師が悪者のように言われることが多いですが、患者さん側にも問題はあると思いますが・・・。
話はそれましたが、あまり薬に頼り過ぎないってことは大事だと思いますよ。
必要な薬を最小限度、これがポイントだと思います。
NHK、今回謝罪だけで済むのかなあ。しかも特定の薬の名前出してたし、その薬の宣伝にもなりかねないわけで。
睡眠学会なども抗議文を出したようですし、うちきりになった民放の番組を思い出しましたけどね。